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station-9 [station(短編)]

はじめから読む

 そうやって、心のほんの片隅。ずっとずっと奥のほうで、賢二の将来に、志保自身も含めて期待をしている自分がいて。それに向けて、少しでも自分が近づけるように今の賢二の期待に添おうとする自分が浅ましくて嫌だった。
もちろん、今賢二がそうして欲しいと思っていて、喜ぶから志保は賢二の期待にこたえるのだけど。心の奥で、少しでもそう思っているのが、志保自身嫌で、だからいつもよけに、敗北感を感じていたのかもしれない。
 就職活動の開始を間近に控えた志保にとっては、そんな賢二への期待は、邪魔で仕方がなかった。
だけど、賢二と一緒にいて、大事にされるほど賢二との将来に期待をしてしまう。

 私は、仕事に対して自分の夢を理想を追いかけていいのだろうか。
それとも、彼と一緒に生きていくために、何かを削った方がいいんだろうか。

「志保。あーんして。とか言ってくれないの?」
賢二が、志保をからかう。
「え。何でよ。」
「何でって、普通言ってくれるでしょ。」
「普通って。こんな場所でやれっていうのが、普通じゃないし。」
そういうと、志保は改めて自分達のことがなんだか、恥ずかしくなってきて、顔が熱くなるのを感じた。

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