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station-10 [station(短編)]

はじめから読む

「ああ。もうしょうがないなぁ。」
志保は、自分の熱を振り払うように言い放った。
「そうこなくっちゃ。」
賢二は、ニヤリと笑う。

 その、ニヤリと笑う顔が、少年ぽくって普段の賢二には無い雰囲気で志保は好きだった。
志保と、賢二の親友増井に対してしか見せない顔。
知り合ったときから、ちらっと横から見ていて、いつか自分にもそうやって笑って欲しいと思ってきた笑顔。
 私は、この笑顔が見たいんだ。
 確かに、ずっと賢二と一緒にいれたらいいって思うけど。今は、笑顔が見たい。
 志保の心にさっきまであった曇りが消えた。

「はい。あーん。」
そういって志保は、スプーンを賢二の口にいれた。
 また、顔が熱くなるのを感じた。
それもそのはずで、志保がさっき言い放った言葉が強くて、会話をとめて仲間達が志保と賢二を見ていた。
「よくできました。」
 賢二は、一口のプリンを味わうと、志保の頭をわしわしと、撫でた。撫でるというより掴んで揺らすって感じだったけど。
しばらく、志保は賢二に揺らされていようと思った。
賢二の腕の影に隠れて、自分のきっと赤くなってるだろう顔がみんなに見えないと思ったから。

「はぁ。ほんっとに、二人仲いいよね。それにしても、やっぱ志保はツンデレだよね。」
裕美が言った。
その裕美の言葉に答えるために、賢二は手を止めた。
「だろ?だから、俺もみんなの前だと、志保楽しいからさぁ。」
賢二が、本当に楽しそうに返すのを聞いて、志保は、イラッとした。こっちは、本当に照れてるのに、気づいていたけど、やっぱりわざと楽しんでいたのかと。

「でもさぁ。彼女いない俺の前では、悲しくなるからやめて。」
「あ。わりぃ。アッちゃん。でも、それも計算済み。」
「うわっ。賢二のオニっ。」
『あはは・・・。』
みんなが笑う。



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