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station-8 [station(短編)]

はじめから読む

 志保は、スプーンを握るてに力を込めていた。
どっちに転んでも、賢二はおいしい思いをする。
志保は、敗北感を感じていた。自分はおもちゃにされていると。
「っああ、もう。しょうがないなぁ。一口だけだよっ。」
 志保は、賢二が一番のぞむ方を受け入れた。
プリンを一さじ、賢二の口に運ぶ。
 賢二の物事を自分の得する方向に持っていく技を見せられると、志保はいつも負けたと思いながら、感心する。
そして、できる限り賢二の望む方に従う。
だって、賢二を逃したくないから。そう思ってしまっている自分自身に情けなさを感じて、負けたと余計に思ってしまう。
 賢二は、志保に対してだけではなくて、他の仲間に対しても、ゼミの先輩でも後輩でも、買い物に行っても。
志保の見ている範囲ではいつも、何かあると自分が得する方に物事を運ばせる。
 要領がいいのか、交渉がうまいのか。
見ていて、たまにそれはどうかと思うときはあるけれど、大体他の人のときは相手も何かしら得をする。
それは、ある種の才能で。賢二はそれに気づいているのかどうかわからないけど。
志保は、とにかくすごいと、認めていた。そして、そんな賢二だからきっと将来は出世するはず。
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