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モンマルトルの丘-3 [モンマルトルの丘]

 玲志の目の前に、パリの街が広がる。
周りに建ち並ぶ家々に遮られはするけれど、自分が登ってきた階段の先に見えるのがなんとも嬉しい。
 額にジンワリと汗をかいているのを思わず手の甲で拭う。
汗に濡れた手の甲はキラキラと光を反射した。
その手の甲をジーパンに擦ろうと思って、腿の横に手を持って行ったが、思い止まった。
ふいに、批難をたっぷりこめて自分の名前を呼ばれたような気がした。
 もちろん、いまこの場には自分一人だけなのだから、そんな気がしただけだった。
 歩いている間は、何も考えないで居られた気がするのに。玲志の心の中は今いろいろな事が渦巻いていた。
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モンマルトルの丘-2 [モンマルトルの丘]

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 たぶん他にも、いっぱいある。
今現在の自分の状態とか以外にも、もっと大きく自分を取り囲んでいることとか。
心の奥底にある、よくわからない気持ちとか。その気持ちに向き合おうとしない自分とか。
とにかく、彼には「くっそ。」と吐きたいことは、いくらでもあった。

 階段の連続に疲れてきて、ついつい前かがみになる。
一段一段、しっかり見つめて、脚を前に出す。
 すぅっと、こめかみの横から汗が流れて、瞬きによって地面に落ちると。コンクリートに、黒いしみを作った。
彼は、自分が滴り落ちるほど汗をかいていたのに驚いて、歩みを止めた。
そして、腕時計を見た。
時間は、九時半をちょっと過ぎたくらい。まだ時間があることを確認すると、今まで向かっていた方に背を向けて、階段に腰を下ろした。
 
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モンマルトルの丘 [モンマルトルの丘]

 僕は一人で、狭い路地の階段を上っている。
季節は冬なのに、熱い。
運動不足がたたったのか、それとも、落ち着かない気持ちが熱くさせるのか。
 僕は一人、モンマルトルの丘を登る。
 丘の上を目指す。それは変わらないけれど、僕の心は、気持ちは何度もぐらぐらと揺れた。


「くっそ。」
 吐き出した息とともに、つい言葉が漏れて、すうっと、パリの空に吸い込まれていった。
 彼は自分でも、何に対してそういったのかわからなかった。
言ったのか、それすらわからないくらいで。息についでに漏れ出た言葉だった。
 たいしたことないと、登り始めた階段に、こんなに疲れていること。
体力には自信のあったはずの自分が、たかが階段で疲れていることが、まず腹立たしかった。
それに、ホテルを出たときは、身を切るような寒さだったのに、今はその厚着のせいで自分が苦しんでいること。
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