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station-7 [station(短編)]

はじめから読む

「しほ。忘れてた。プリン俺にも頂戴」
賢二の笑みに、身構えた志保だったが、拍子抜けした。
「えー。なんで。」
 人がせっかく、幸せとかについていろいろ思いをめぐらせていたのに。もちろん、それはほんの一瞬の時間でしかないが。
何かちょっと、ムッとしたのを志保は隠せなかった。
「さっきから、いってんじゃん。あーん。」
賢二は、ただ話を元に戻しただけ。そういって、賢二は口入れてといわんばかりに、志保にアピールする。
「欲しいんだったら、自分で食べなさいよっ。」
そういって、志保は賢二の前に、スプーンをぐっと突き出した。また、自分が賢二のペースに巻き込まれて行くきがしてついつい、きつくなる。
 べつに、べたべたするのは嫌じゃないんだけど、ただなんとなくみんなといるときは、みんなといたい。
そう思ったのは、いつだったか、自分という人間が、賢二と対になって周りに認識されているのを知ったときからだった。
 もちろん、一緒にいる仲間は、入学してから、賢二と付き合う前からの友達だから。志保のことは志保として認識してくれている。
「いいの?だったら全部食べるよ。」
突き出した、スプーンに手を伸ばしながら、賢二はまたニヤリと笑う。いいことを思いつくと賢二は絶対ニヤリと笑う。
「うっ、それは。」
 志保は、はめられたと思った。たしかに、賢二なら、人の物取り上げて食べそう。というか、よく志保以外にもやってる。
 プリンを全部取られるか。それとも、スプーン一杯を人前で食べさせてあげるか。
志保は、自分がなんだかすごい本当はどうでもいい事で悩んでるのがむなしかった。
「俺は、どっちでもいいけどね。」
 そういって、言葉を詰まらせた志保の顔をニヤニヤしながら覗き込む。
 
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